相続は「相続人調査」と「相続財産調査」から始めましょう。

相続人調査と相続財産調査の重要性

家族の一員が亡くなった場合、相続人は遺産分割の協議を行う必要があります。この遺産分割協議は、相続財産の具体的な分け方を相続人同士で合意するプロセスです。不動産の名義変更などの相続手続きを進めるためには、遺産分割協議が必要です。特に相続人が複数いる場合は、この協議を実施することが不可欠です。この記事では、遺産分割協議を効果的に進めるための準備について説明します。

相続人調査と相続財産調査の必要性

相続人が欠けていると遺産分割協議が無効に

遺産分割協議では、民法により指定された法定相続人が「全員参加」しなければなりません。一人でも法定相続人が不足する場合、遺産分割協議は無効になります。特に亡くなった方が離婚歴があり、前妻や前夫との間に子供がいる場合、前妻(前夫)との子供の存在を見落とす可能性もあるため、戸籍謄本などの調査が必要です。法定相続人を明確に特定し、確定させる作業を「相続人調査」と呼びます。

相続財産が確定しないと遺産分割協議を開始できない

遺産分割協議の対象は、亡くなった方が残した相続財産です。ただし、亡くなった瞬間に全ての相続財産が明らかになるケースはほとんどありません。相続人が知らない預貯金や株式などが存在することがあり、一部の相続人だけが特定の預貯金口座を知っていたり、本人しか知らない財産や債務が見つかることもあります。

相続人の間で相続財産の範囲について認識が一致しない場合、「分割対象」を確定できず、遺産分割協議を円滑に進めることは難しくなります。したがって、遺産分割協議を始める前に、必ず相続財産調査を実施して、遺産の範囲を特定し、相続人間で遺産分割の対象となる財産についての認識を一致させる必要があります。

相続財産が確定しないと遺産分割協議を開始できない

遺産分割協議の対象は、亡くなった方が残した相続財産です。ただし、亡くなった瞬間に全ての相続財産が明らかになるケースはほとんどありません。相続人が知らない預貯金や株式などが存在することがあり、一部の相続人だけが特定の預貯金口座を知っていたり、本人しか知らない財産や債務が見つかることもあります。

最初に相続人調査と相続財産調査を行う

相続人調査や相続財産調査に不備があると、遺産分割協議を進めても最終的にやり直しになることがあります。相続人調査を怠ると、相続人が漏れてしまい、遺産分割協議は無効になります。また、相続財産調査に漏れがある場合、後から財産が見つかった場合には、その財産について再度分配方法を決める必要があるため、手間がかかります。したがって、遺産分割協議の準備として、相続人調査と相続財産調査を十分に実施することが非常に重要です。

相続人調査の手順と謄本の入手方法について

以下に、相続人調査の手順と方法を説明します。

相続人調査とは

相続人調査は、個々のケースにおいて法定相続人を特定する手続きです。法定相続人は、被相続人の生涯にわたる戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本を順次取得することによって明らかにできます。戸籍謄本には、結婚・離婚の履歴、結婚中に生まれた子供や認知した子供に関する情報、養子縁組に関する情報などが記載されています。これらの情報を網羅的に収集し、今の家族には知られていない子供を含む「全ての相続人」を特定できます。

相続人調査の手順

相続人調査は以下の手順に従って進めます。

  • 被相続人の生まれた時から亡くなった時までの戸籍謄本を入手する
    これには戸籍謄本、原戸籍謄本、除籍謄本が含まれます。場合によっては被相続人の子供や親の戸籍謄本も必要になることがあります。
  • 取得した謄本の内容を詳細に確認
    日付に連続性があるか、抜け漏れがないかを確認します。
  • 戸籍謄本の内容から相続人を特定
    相続人を特定していきます。そのときに戸籍謄本の内容から探す必要があります。
  • 相続関係説明図を作成
    これは必須ではありません。
    一方で、相続人を特定したら、相続関係を明確に示すための図を作成しておくと、他の人に説明する際などに便利です。

相続人調査に必要な書類と確認事項

相続人調査の際に収集するべき書類と確認事項は以下の通りです。

  • 戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 除籍謄本
  • 改正原戸籍謄本

特に確認すべき事項は、「婚姻」「離婚」「養子縁組」「転籍」「認知」などです。特に養子縁組や認知が行われている場合、新たな相続人が生じる可能性があるため、記録内容を慎重に確認する必要があります。

謄本の入手方法

相続人調査のために必要な謄本は、それぞれの本籍地の役所で保管されています。各謄本を申請し、取得していく必要があります。役所に直接申請することも可能ですが、遠方の場合には郵送で取得する方が便利です。

郵送申請の場合、戸籍謄本の申請書類、手数料の定額小切手、返信用の切手を役所に送ることで、必要な謄本を受け取ることができます。相続人調査においては、日付に連続性が求められるため、漏れや抜けが生じると相続人を見落とす可能性があるため、慎重に取り組む必要があります。

相続財産調査で調査すべき項目

相続財産調査において調査すべき項目は以下の通りです。

預貯金

預貯金については、関連する金融機関に出向き、相続人であることを証明する資料(戸籍謄本など)を提出し、残高証明書や取引明細書などを入手しましょう。これにより、どの金融機関に口座があるか、相続開始時点での預貯金残高を知ることができます。

株式

株式については、関連の金融機関に連絡を取り、取引内容を開示してもらうことができます。相続人であることを示すことで、預けている株式、投資信託、社債などの一覧を入手できます。

不動産

自宅に保管されている不動産の権利証(登記識別情報)や固定資産税の納付書などをもとに、不動産の全部事項証明書を入手し、詳細を調査しましょう。同一市町村内に多くの不動産を所有している場合、市町村の名寄帳(固定資産課税台帳)の開示により、その地域内の不動産を一括で把握できます。

現金や動産

現金、骨董品、貴金属、絵画などの存在については、自宅内を丹念に探し、漏れがないよう確認します。

家の中、郵便受け、貸金庫をチェック

相続財産調査の際には、自宅内、郵便受け、貸金庫を慎重にチェックすることが重要です。自宅や貸金庫には遺言書、現金、契約書などが多く保管されていることがあります。引き出し、机、棚などを見逃さず、確認しましょう。郵便受けには銀行、役所、債権者などからの書類が届くことがあるため、相続財産の存在がそこから明らかになることがあります。

まとめ

相続人調査と相続財産調査は手間がかかる作業であり、戸籍謄本の解読方法も複雑です。誤った情報を得てしまうリスクがあるため、弁護士に依頼することを検討することをお勧めします。相続に詳しい弁護士は無料相談を提供していることも多く、労力をかけずに遺産相続手続きを進めるための支援を受けることができます。