相続で仲の良かった兄弟と揉めてしまう

「うちの兄弟は仲が良いから、相続トラブルなんてない!」と考えるのは、当然のことのようにも思います。しかし、実際には相続が発端で兄弟姉妹の関係性が崩れてしまい、相続争いに発展してしまうケースは少なくありません。身内の関係性が壊れて良いことは1つもありませんので、相続で争わないような事前準備として、よくあるトラブルのケースとその対策を弁護士がお伝えします。

更に詳細を知りたい方は兄弟姉妹の相続トラブルをお読みください

兄弟姉妹の相続トラブル

実際に発生した兄弟姉妹の相続トラブル

相続が発生した兄弟姉妹で実際に起きたトラブルとその予防策について、解説していきます。

相続財産の不明確さ

具体例として、両親と同居する長男と別居の長女を想定します。両親の死後、長男が「長女が期待したほどの相続財産がない」と主張する一方で、長女は「長男が財産を隠匿している」と疑念を抱くことがあります。

このようなトラブルを予防するためには、両親に財産目録を作成してもらうことが重要です。さらに、財産目録を定期的に見直し、関係者に内容を把握してもらうことが必要です。ただ、いきなり財産目録を作って欲しいと親に言うことは難しいかもしれませんので、「そろそろ遺言書を作っておいた方が良いんじゃない?」など伝え、現時点の財産としてどのようなものがあるのか両親が整理するきっかけを作ると良いでしょう。

遺産を独り占めにしている

同居の子と他の兄弟の寄与度の違い

上記の例で、長男が両親の面倒を見る一方で、長女が外食や旅行などの寄与をしていたとします。しかし、両者の寄与度に対する認識の違いからトラブルが発生することがあります。

兄弟同士がお互いの負担や寄与を理解し合うためには、定期的なコミュニケーションが不可欠です。また、遺言書において、感謝の気持ちや寄与度を明記することで、トラブルを回避することができます。

特別受益と寄与分

生前贈与や遺言の不公平

財産の生前贈与や遺言により、長男が全財産を相続する場合、長女が相続で財産を取得することを期待していた場合にトラブルが発生します。このような場合、生前贈与契約書や遺言書に、相続財産の分配理由を明記することが重要です。また、遺留分侵害額請求を防止するために、遺言書で長女への遺留分に相当する財産を残すことも検討すると良いでしょう。もし、今回のケースで長女の納得を得られる場合には、裁判所の許可を得て遺留分をあらかじめ放棄してもらうことも検討されます。

これらの予防策を講じることで、相続に関するトラブルを最小限に抑えることができます。

遺言書の作成

音信不通の兄弟や未知の兄弟が登場する

家族には、20代で実家を離れ、音信不通になった次男がいました。両親が亡くなった後、次男が突如現れ、「遺産を相続したい」と主張する場合があります。このような事態には、長男も長女も次男との間で遺産分割に関する意見の対立が生じる可能性があります。

突然の登場や連絡不能な状況に備えるために、戸籍を調べることで他の兄弟の存在を確認できます。また、事前に遺言書を作成しておくことで、財産分配のルールを明確にすることが重要です。

兄弟の配偶者の介入

ある家族では、長男が実家を相続し、長女は何も相続しないと思っていました。しかし、長女の配偶者が「もらえるものはもらうべきだ」と口を出す場合があります。このような状況では、配偶者の意見が家族内で緊張を引き起こすことがあります。

このような問題を未然に防ぐために、家族全員で将来の遺産分配について話し合い、方針を決定することが重要です。配偶者も含めた意見を聞き合い、将来のトラブルを回避するために協力しましょう。

相続・遺産分割の事例

最後に

兄弟間の仲が良くても、安心せずに準備をしておくことが重要です。生前から配偶者を含めて、兄弟間の意思疎通を円滑にすることや、必要に応じて両親に遺言を書いてもらうことが大切です。そして、協議が難航しそうな場合は、問題が深刻化する前に、早めに弁護士など第三者の介入を検討することをおすすめします。